主文
1 原判決中,被上告人に関する部分のうち,本訴請求に関する部分並びに反訴請求に関する部分のうち100万円及びこれに対する平成16年12月1日から支払済みまで年30%の割合による金員の支払を求める部分を破棄する。2 前項の部分につき,本件を広島高等裁判所に差し戻す。
3 上告人のその余の上告を棄却する。
4 前項に関する上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人馬場正裕の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
1 本件本訴請求事件は,被上告人が上告人に対し,平成5年3月及び平成10年8月の2回の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額(以下,単に「利息の制限額」という。)を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると原判決別紙利息制限法計算書3のとおり過払い金が発生しているとして,不当利得返還請求権に基づき,過払い金416万9976円及びこれに対する年6分の割合(商事法定利率)による民法704条前段所定の利息の支払を求める事案であり,本件反訴請求事件は,上告人が被上告人に対し,上記各貸付けに係る債務の各弁済には,貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)43条1項の規定が適用されるから,利息の制限額を超える部分の支払も有効な利息の債務の弁済とみなされるとして,上記各貸付けの残元本合計393万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 上告人は,貸金業法3条所定の登録を受けた貸金業者である。
(2)ア上告人は,平成5年3月26日,被上告人に対し,300万円を次の約定で貸し付けた(以下「本件第1貸付け」という。)。
(ア) 利息年40.004%
(イ) 支払方法最終支払日を平成5年5月末日とし,同日限り元本及び利息を持参して支払う。
イ上告人と被上告人は,平成5年5月末日ころ,本件第1貸付けについて,元本の弁済期を期限の定めのないものとする旨合意した。
ウ被上告人は,平成5年4月26日から平成15年12月19日までの間,上告人に対し,本件第1貸付けに係る債務の弁済として,原判決別紙利息制限法計算書1の「年月日」欄記載の各年月日に,「弁済額」欄記載の各金銭を支払った。
エ上記ウの各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると,平成8年10月31日以後,過払い金が発生している。
(3)ア上告人は,平成10年8月28日,被上告人に対し,100万円を次の約定で貸し付けた(以下「本件第2貸付け」といい,これと本件第1貸付けとを併せて「本件各貸付け」という。)。
(ア) 利息年40.004%
(イ) 支払方法最終支払日を平成10年9月27日とし,同日限り元本及び利息を持参して支払う。
イ上告人と被上告人は,平成10年9月27日ころ,本件第2貸付けについて,元本の弁済期を期限の定めのないものとする旨合意した。
ウ被上告人は,上告人に対し,本件第2貸付けに係る債務の弁済として,原判決別紙利息制限法計算書2の「年月日」欄記載の各年月日に,「弁済額」欄記載の各金銭を支払った。
(4) 上告人と被上告人との間で,継続的に貸付けが繰り返されることを予定した基本契約(以下,単に「基本契約」という。)は締結されていない。
3 原審は,前記事実関係の下において,次のとおり判断して,被上告人の本訴請求を全部認容すべきものとし,上告人の反訴請求を全部棄却すべきものとした。
(1) 本件各貸付けに係る債務の各弁済に当たって貸金業法18条1項所定の要件を具備した書面が被上告人に交付されていないので,上記各弁済については,同法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。
(2) 同一の貸主から複数の貸付けを受ける借主としては,基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される場合でなくても,過払い金を考慮して全体として借入総額が減少することを望み,複数の権利関係が発生するような事態が生ずることは望まないのが通常の合理的意思であると考えられ,過払い金が発生した後に別口の借入金が発生したときであっても,その別口の借入金の弁済に過払い金を充当する意思を有していると推認するのが相当であるから,上告人と被上告人との間で基本契約が締結されておらず,本件第1貸付けについて過払い金が発生した平成8年10月31日の後に,本件第2貸付けに係る債務が発生したものであるとしても,本件第1貸付けについての過払い金は,本件第2貸付けに係る債務に当然に充当されると解される。
(3) 本件各貸付けに係る債務についての過払い金は,上告人の不当利得となるが,上告人は,上記過払い金が発生した時点から民法704条の悪意の受益者というべきである。
(4) 上記過払い金の返還債務は,実質的に,上告人の商行為によって生じた債務というべきであり,また,上告人が,過払い金を営業のために使用し,収益を上げているのは明らかであるから,上告人が上記債務に付すべき民法704条前段所定の利息の利率は,商事法定利率の年6分と解すべきである。
4 しかしながら,原審の上記3(2)及び(4)の判断は是認することができない。
その理由は,次のとおりである。
(1) 原審の上記3(2)の判断について
貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払い金が発生し(以下,この過払い金を「第1貸付け過払い金」という。),その後,同一の貸主と借主との間に第2の貸付けに係る債務が発生したときには,その貸主と借主との間で,基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されており,第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていたとか,その貸主と借主との間に第1貸付け過払い金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情のない限り,第1貸付け過払い金は,第1の貸付けに係る債務の各弁済が第2の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず,第2の貸付けに係る債務には充当されないと解するのが相当である。なぜなら,そのような特段の事情のない限り,第2の貸付けの前に,借主が,第1貸付け過払い金を充当すべき債務として第2の貸付けに係る債務を指定するということは通常は考えられないし,第2の貸付けの以後であっても,第1貸付け過払い金の存在を知った借主は,不当利得としてその返還を求めたり,第1貸付け過払い金の返還請求権と第2の貸付けに係る債権とを相殺する可能性があるのであり,当然に借主が第1貸付け過払い金を充当すべき債務として第2の貸付けに係る債務を指定したものと推認することはできないからである。
これを本件についてみるに,前記事実関係によれば,上告人と被上告人との間で基本契約は締結されておらず,本件第1貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払い金が発生した平成8年10月31日の後に,本件第2貸付けに係る債務が発生したというのであるから,上記特段の事情のない限り,本件第1貸付けに係る債務の各弁済金のうち過払い金となる部分は,本件第2貸付けに係る債務に充当されないというべきである。
そうすると,本件において上記特段の事情の有無について判断することなく,上記過払い金となる部分が本件第2貸付けに係る債務に当然に充当されるとした原審の上記3(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
(2) 原審の上記3(4)の判断について
商行為である貸付けに係る債務の弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払い金を不当利得として返還する場合において,悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は,民法所定の年5分と解するのが相当である。
なぜなら,商法514条の適用又は類推適用されるべき債権は,商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものでなければならないところ,上記過払い金についての不当利得返還請求権は,高利を制限して借主を保護する目的で設けられた利息制限法の規定によって発生する債権であって,営利性を考慮すべき債権ではないので,商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものと解することはできないからである。これと異なる原審の上記3(4)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
5 以上によれば,論旨は理由があり,原判決中,被上告人に関する部分のうち,本訴請求に関する部分並びに反訴請求に関する部分のうち100万円及びこれに対する平成16年12月1日から支払済みまで年30%の割合による金員の支払を求める部分(本件第2貸付けについての請求部分)は破棄を免れない。
そこで,前記特段の事情の有無等につき更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
なお,その余の部分に関する上告については,上告受理申立ての理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。
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@本件届出行為により原告事業所の44名中39名という約9割に相当する加入員が減少していること,
A上記39名の従業員全員は,資格喪失当日に六大に転籍しているが,六大は,代表者を始めとする役員構成,本店及び事業所の所在地,事業目的等を原告とほぼ同じくし,従前の原告の業務と六大設立後の両事業所の業務の実態には相違がなく,実質的な転籍の事実が認められないこと,
B原告は,本件転籍行為は経営の合理化又は再構築を達成するための分社化に伴うものである旨主張するが,原告の挙げる労務費の削減等の分社化の目的はいずれも企業の経営努力によって確保できるものであり,また確保されているものであって,そのための分社化の必要性は認められないこと,
C本件届出行為は,掛金の支払に当てるべき資金に余裕がある状態で任意的に加入員を減少させるものであること,
D原告は,本件転籍行為の直前に脱退に係る特別掛金の額を照会していたこと,以上の特殊事情が存在するのであって,これらの特殊事情にかんがみれば,本件転籍行為は,原告の経営上の実質的な必要に基づくものではなく,専ら特別掛金の負担を免れることを目的としたものであり,これに伴う本件届出行為は,法138条5項及び規約附則21条の適用を潜脱するためのものというべきである。
また,本件届出行為の結果,原告が納付する事務費を除く掛金は,約75万7000円から約12万5000円に減少し,被告は,原告からの毎年の掛金収入を約758万4000円ずつ失うことになったが,他方,被告は,本件届出行為後においても,原告事業所の加入員及び元加入員に対して毎年約1550万円ないし約1750万円の年金等(国の代行部分を含む。)を支給している。
本件届出行為を原因とする原告事業所の加入員又は元加入員に対する将来の年金等の給付に必要な被告の積立金等の不足額を規約の規定により算定すると合計9431万1431円となり,その額は,原告事業所の脱退に係る不足額の合計1億1347万0720円の約83パーセントに相当するのであって,本件届出行為が被告と他の事業所に及ぼす影響は当該事業所の脱退に匹敵するものであるといえる。
以上によれば,本件届出行為は設立事業所の脱退の申出に準ずるものといえ,法138条5項及び規約附則21条の適用又は準用により,本件処分は適法である。
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